やぶにらみ気まぐれmemo

読んだ本、観た映画などなどの徒然日記

漫画「いちげき」

いちげき (1) (SPコミックス)

いやぁ、面白かった。7巻を一気に読んだ。

原作付きだが、松本氏の絵にピタリとはまっている。

一応、丑五郎が主人公だが、感情移入はなかなかしにくい、というかできない。

他の登場人物にも、一瞬だけは感情移入できるのだが、あっけなく裏切られる。

ただ、彼らが幕末という時代にこのように考え、行動するかもしれないことについて、リアリティがあって、引き込まれてしまう。

絵も読み取りにくいところもあり、一見、下手に見えたり、雑に見えるところがあるが、その力量はひしひしと感じる。

映画「PERFECT DAYS」

物語を語る映画ではないと思う。

映像(カメラ)、演技、演出、音楽・・・これまで観てきた映画で映画を映画たらしめる技術の頂点だと思った。

涙があふれるような感動ではなく、心に沁みこんでくるものをしみじみとと味わえる感動。

ヴィム・ヴェンダース監督の作品は「パリ、テキサス」が好きだけれど、なんとなく気持ちにピタッとこないもどかしさを感じていた。役所広司も好きだけれど、大好きというわけでもない感じだった。

この映画の監督の感性と役所広司の演技は心を包むようで、本当に引き込まれてしまった。

あとは映像(光と影)と音楽も演出、演技と一体となって心に沁みこんでくる。

 

心に残ったシーンは、仕事の相方が辞めて仕事が夜まで続いてしまう事態に対して、管理会社にクレームをつけるシーン。このシーンで、彼は決して我慢ばかりしている人ではないことがわかって、どこかホッとしてしまう。

 

観終わって、河(川よりも少し幅のある流れの)のある街に住みたいと思った。

残りの人生であと何度観ることになるのだろう。

素晴らしい映画に出会えたことを感謝したい。

映画「君たちはどう生きるか」

映画館で鑑賞。

初めて見た感想を一言で言えば「あまり面白くなかった」になるのだろうけど、その理由はと問われると、宮﨑駿のイメージを受け止めきれなかった、というのが正直はところ。これまで宮﨑監督は自分のイメージを少しでも観客に伝えようとする努力をしていたと思うが、この映画では自分のイメージを映像化することのみに努力し、伝える努力を一切放棄しているように思える。

そういう意味でこれまでの映画と一線を画するものだと感じた。

しかし、宮﨑駿にとってインコってなんなんだろう。

不思議な映画だ。

映画「捜索者」

捜索者 (字幕版)

何十年くらいぶりに、ジョン・ウェインの映画を観る。

監督もジョン・フォードだし、もう少し牧歌的なストーリーかと思ったら、かなりハードな内容だった。

兄家族がインディアンに襲撃され、両親、長女は殺され、次女はさらわれる。

詳しくはわからないが、家族同様の扱いを受けていたインディアンの血をひく兄とジョン・ウェインがその次女をさらった部族を追う。

ジョン・ウェインはもう少しバランスのとれた成熟した男を演じるものだと思っていたら、けっこうエキセントリックな行動をとる。

さらわれた次女がインディアンとして成長していることを知るとその次女を殺そうとしたことにびっくり。

ところどころにコミカルな演出があるが、中心の話は重い。

長男の婚約者のはずだった女の結婚式のシーンで、もどってきた長男といけすかない(ところがけっこう男気がある)男が自分ために殴り合うシーンを嬉々として眺める女の表情が、なかなかの演出。

最初とラストのドアを通したシーンが心に残る。

とにかく気の抜けない映画であった。

映画「ケイコ 目を澄ませて」

ケイコ 目を澄ませて [Blu-ray]

耳が聞こえないケイコの日常生活が淡々と描かれている(ボクサーというちょっと非日常はあるものの)だけなのに、なぜこうも惹かれるのだろう。

特に感動的なエピソードもないのに、ぐいぐい引き込まれてしまう。

ミットでの練習シーン、対戦相手とあいさつを交わすシーン、なぜかしびれました。

三浦友和も相変わらずいい仕事をしている。本当にいい俳優だと思う。

あとなんといってもこのざらついた映像。

連想したのはヴィルモス・ジグモンド

ディア・ハンタースケアクロウを思い出してしまった。

この映像がなければこの映画の魅力はほとんどなくなってしまうと思う。

とにかく、よかった。

本「僕はこうして作家になった -デビューのころ-」五木寛之

僕はこうして作家になった ―デビューのころ―

昔から五木寛之さんの本をよく読む。エッセイなどは繰り返し読む。

どこがいいのかと問われると、これがよくわからない。

五木さんの本とはいっても親鸞ものはあまり読んでいない。

これも理由は特にない。

好きな理由として思いつくのは「ノスタルジーを感じるから」というものだけど、決して同時代を生きた作家ではないし、どちらかと言えば親の世代に近い。

ただ、彼の文章を読むと懐かしさを掻き立てられるのだ。まあ、彼が活躍した時代に青春を過ごしてきたこともあるだろうけれど、彼の生い立ちなどの文章からも感じるのだから、どこか共鳴するものがあるのだろう。

一つ言えるのは、彼の文体が好きだということだ。自身も書いているように、根無し草のような浮遊感、悪く言えば落ち着きのなさなのだが、あの押しつけがましさの無さがしっくりくるのだ。ああ、また彼のエッセイをだらだらと読み耽りたい。

本「男子観察録」

男子観察録 (幻冬舎文庫)

まず、選ばれた男性たちの顔ぶれがすごい。

よく、ここまでバラエティに富んだ男性について、これだけ充実した、面白い内容を書けたものだと感心する。

書かれた内容も男性のことだけを客観的にとらえたものではなく、なぜ、自身がこの人を好きなのかどのような係りを持つのかについて、自身をさらけ出し、しかも情に流れることなく(とり・みき氏の解説の言葉を借りれば”品格”をもって)書けるものだ。

とり・みき氏の解説も素晴らしい。

特に印象に残ったのは、現在も折に触れて書かれたり、語ったりしている「安部公房」と最後の「セルジオとピエロ」だ。

セルジオをピエロ」は、とり氏も書いているように、映画の一場面を観るように読み、思わず涙してしまった。

ヤマザキさんの文章には心を揺さぶられ、元気づけられることが多い。

内容は文明批評としても読める。またいつか読みたい。