やぶにらみ気まぐれmemo

読んだ本、観た映画などなどの徒然日記

歌謡曲「夜明けのスキャット」由紀さおり

(31) 由紀さおり 夜明けのスキャット - YouTube

 

はじめて「歌謡曲」とそれに潜む大人の世界を意識した曲。

聴いたときのせつない”気分”は今でも忘れられない。

もちろんその元となるそれなりにエロい歌詞の世界が理解できたわけではないのだが。

この曲を深夜ラジオで聴いた世代からは少しずれているのだけれど、なんというか受験勉強の合間にふと流れてくる曲にさみしさを感じる気分は共有できるんだよなぁ。

聴くたびに、思春期手前の自分に戻って、その世界を垣間見た気分にさせる。不思議な歌だ。

 

 

 

本「業界の濃い人」

 

濃い人が書いた濃い人の本。

いしかわじゅんは面白い。

はじめて知ったのはBS漫画夜話だ。はじめは、批評としてぎりぎりの線を確信犯的に語っているのかと思っていたのだけれど、そのうち、彼は自分でも止められない衝動で語っているのだな、と理解した。

それでも、いやだからこそ面白い。

文章や言葉から彼の膨大な作品の摂取量が思われるし、切り口も専門的な知識に裏付けれていて面白い。まあ、中には思い込みではないかと感じるものもあるが、ほとんどの言説には説得力がある。

この本も面白かった。面白い人が面白い人を語ったとき、必ずしも面白くなるわけではないけれど、面白さの位相が違うので相乗効果をあげている。

本「そのうちなんとかなるだろう」

 

二回目の読了。

現代の社会批評でもあり、青春の記録でもあり、昭和の時代の風物詩でもあり。

しかし、なんといっても読む人を勇気づけてくれる本だ。

印象に残ったのは二つ。

今は無き若き日の友人を想う心。

日比谷高校のくだりは書くひとが書くと、いやみにしか思えないのだが内田さんが書くとなぜか本人の思い出を追体験してしまう。若くて賢くて無垢であることがいかに貴重かを想い、切なくなるのだ。

そして、ひだまりの中で古いロックを聴きながらアイロンがけをすることが永遠に続けばいいというシーン。なんだかわかるんだなぁ。

映画「ドライブ・マイ・カー」

 

<ネタばれあり>

久しぶりに映画館で鑑賞。

平日にもかかわらず、そこそこ席は埋まっていた。アカデミー賞効果かな。

一言で言うと、「大人の映画」。

冷静に観ればこんな明晰なしゃべり方をする人はいないと思う。まあ、なかにはいると思うけど、相当特殊な人だと思う。脚本では。このような緻密で明晰な会話をする人はいないことをわかっていて、演出効果を優先して自然な感じを排したのだろう。そしてそれは想定通りの効果をあげていると思う。

個人的な好みで言えば、主人公の妻はどちらかと言えば嫌いなタイプ(しゃべり方やその内容)だし、その分、主人公が浮気の現場を目撃したショックや、妻を失いたくないという気持ちになかなか共感できなかった。

それに浮気現場を目撃するシーンで主人公が家を出るときに鍵をしなかったので、奥さんは見られたことに当然気づいているよね。

 

まあ、それはそれとして、ドライバーの女の子は良かった。最後はちょっとしゃべり過ぎの気もしたが、会話を最小限の言葉で済ませるクールな感じが自然に出ていた。

 

一番好きなシーンはプロデューサーの韓国人の家で食事をするシーン。

まあ、あんな会話で食事のシーンを成り立たせたのもすごいし、あの夫婦のあり方は好もしかったし、あの俳優さんはいいなあ。

あと、西島秀俊は声がいい。

最後のシーンは、舞台が韓国で上演されているということだよな。きっと。

 

ちなみに、亡くなった人に対する”取返しのつかないやりきれなさ”を描く映画としては「鈴木家の嘘」のほうが胸に迫る。

 

最後に映画館側へのクレームを。

本編の映画が始まるまでのゴミのような予告編や、盗撮防止の画像はなんとかならないものか。おかげで寝てしまって本編の出だしを見損なってしまったよ。なぜ金を出してまで観たくないもの、不愉快な気分になるものを観せられなければならないのかわからない。これでますます映画館から足が遠のくのであった。

映画館側は自分の首を自分で絞めているのがわかっているのだろうか。

本「検事の本懐」

 

不覚にも、というほどのことでもないが、「第三話 恩を返す」を読んで落涙してしまった。まさか、まさかミステリーを読んで泣くなんて・・・。とりあえず、泣かせるだけの力が著者にあるのだ、と自分を納得させた。

しかし、面白い、感動する、心が震える。

これはただのミステリーではないです。

もちろん、社会正義に対する著者の矜持が根底にはあるのだけれど、それにもまして人間であれば、多かれ少なかれ誰もが持っている”純粋なもの”に対する慈しみのようなものを感じる。これを大事にしなければ、何を大事にするのだ。まさに、ハードボイルドの名言「やさしくなければ生きる資格がない」を思い起こさせる作品だ。「第三話」を読んで感じたのだけれど、著者には青春小説を書いて欲しいなぁ。

 

本「最後の証人」

 

あ~、面白かった。

主人公のキャラをたてるためのエピソードもストーリーにからめていて鬱陶しさを感じないし、主人公の魅力を際立たせている。

途中から、なるほど、という気がしてくるけどストーリーの力強さを損ねるものではない、検察の弱さも少し気になるけど、人の思い込みを利用していて話の説得力をそれほど弱めるものでもない。

しかし、著者はこれだけの知識をどうやって身に着けたのだろう。そっちが気になる。しばらく追っかけようっと。

 

映画「女王蜂」

女王蜂

朝起きて、ベッドの中のままタブレットで何となく観た映画がこれ。

もうこれは映画を物語として楽しむという感覚ではなくて、市川崑のタッチをあの「犬神家」とは別の材料で楽しみたいというなんとも言いようの無い飢餓感を満たしたいという感覚。自分でもよくわからない。

案の定、時々寝ながらの鑑賞。だけど満足した。ところどころに入る風景のカットを観るだけで、「ああ、市川崑だなあ」と感じて心地いい。

話は毎度の家系と恋愛と殺人のほどよいブレンド

しかし、岸恵子は当時46歳だけど相変わらず美しく、艶やかだ。

中井貴恵は当然大根だけれど役割である初々しさを存分に発揮して、これもよし。

萩尾みどりの美しさも堪能できたし、BGV的映画として大満足だった。