素晴らしい本だ。瑞々しい思想の波に洗われた気分。
昔から、人生とは何かを考えるとき、単純に無秩序との闘いをイメージして「人生とはエントロピー増大の法則との闘いだ。だから元気を出すためには整理整頓、掃除をするに限るのだ」と思っていた。
読み終わって、このモデルは人間同士の関係、特に恋愛にもあてはまるような気がした。生き生きとした人間関係はある固定化した感情がもたらすものではないと思う。少し好きになったかと思うと、嫌いなところが目につく、またしばらくすると、好きになれるところに気が付く、嫌いなところだけを思いついていると、やがてその関係は死に至る。年齢を経ても生き生きとした関係というものは、好きと嫌いが動的平衡を保っている状態なのではないだろうか。
そう思うと他人との関係も重苦しいものではなくなるような気がするのだが。