やぶにらみ気まぐれmemo

読んだ本、観た映画などなどの徒然日記

本「失踪当時の服装は」

失踪当時の服装は【新訳版】 (創元推理文庫)

あ~、面白かった。

紹介の文章に「警察小説の金字塔」と書かれていたけど、寡聞にして知らなかったので、どんなものかな、とのお試し気分で購入。

翻訳も読みやすく、一気に読んでしまった。書かれた時代を考えるとまさに金字塔だ。

まず、署長がかっこいい。一般的なかっこよさではない。事件に挑む姿勢がひたすらかっこいいのだ。人格者であるわけではない、常にピタリピタリと喝破する天才でもない、周囲の人間へのセリフも今で言えばハラスメント交じり。

ただし、事件への執着はすさまじい。解決のためには、周りの人間の考えや、都合など知ったこっちゃない。ただ、周囲の人間は誰しも、最後には彼を信頼し、ついていく。

世の中には、まだまだ、出会っていない名作がたくさんある!

うれしくなった一冊。

本「傲慢と善良」

傲慢と善良 (朝日文庫)

カバーのイラストは作者が選んだものなのだろうが、なんというか、「本当にいいの?」。もちろん、読み終わった後の感想だけど。

とにかく面白かった。恋愛小説ではあるのだろうけど、「結婚」というイベントについて世の人々が持つ、諸々の、もやもやとした、屈折した、あこがれであったり、偏見であったり、本当に諸々の感情を顕微鏡を見ながら腑分けるように描写していく。いや、しつくすというのだろうか。後にはぺんぺん草も生えていないという感じ。

だが、読後感は青春小説を読み終わった後のように爽快だ。あまりにも爽快すぎて、話がうますぎるとも感じるが、いいではないか。ここまで書き尽くしたのだから。

あらためて人間の持つ多様性、複雑さ、脆さ、頑強さを感じさせてくれた物語だった。

漫画「いちげき」

いちげき (1) (SPコミックス)

いやぁ、面白かった。7巻を一気に読んだ。

原作付きだが、松本氏の絵にピタリとはまっている。

一応、丑五郎が主人公だが、感情移入はなかなかしにくい、というかできない。

他の登場人物にも、一瞬だけは感情移入できるのだが、あっけなく裏切られる。

ただ、彼らが幕末という時代にこのように考え、行動するかもしれないことについて、リアリティがあって、引き込まれてしまう。

絵も読み取りにくいところもあり、一見、下手に見えたり、雑に見えるところがあるが、その力量はひしひしと感じる。

映画「PERFECT DAYS」

物語を語る映画ではないと思う。

映像(カメラ)、演技、演出、音楽・・・これまで観てきた映画で映画を映画たらしめる技術の頂点だと思った。

涙があふれるような感動ではなく、心に沁みこんでくるものをしみじみとと味わえる感動。

ヴィム・ヴェンダース監督の作品は「パリ、テキサス」が好きだけれど、なんとなく気持ちにピタッとこないもどかしさを感じていた。役所広司も好きだけれど、大好きというわけでもない感じだった。

この映画の監督の感性と役所広司の演技は心を包むようで、本当に引き込まれてしまった。

あとは映像(光と影)と音楽も演出、演技と一体となって心に沁みこんでくる。

 

心に残ったシーンは、仕事の相方が辞めて仕事が夜まで続いてしまう事態に対して、管理会社にクレームをつけるシーン。このシーンで、彼は決して我慢ばかりしている人ではないことがわかって、どこかホッとしてしまう。

 

観終わって、河(川よりも少し幅のある流れの)のある街に住みたいと思った。

残りの人生であと何度観ることになるのだろう。

素晴らしい映画に出会えたことを感謝したい。

映画「君たちはどう生きるか」

映画館で鑑賞。

初めて見た感想を一言で言えば「あまり面白くなかった」になるのだろうけど、その理由はと問われると、宮﨑駿のイメージを受け止めきれなかった、というのが正直はところ。これまで宮﨑監督は自分のイメージを少しでも観客に伝えようとする努力をしていたと思うが、この映画では自分のイメージを映像化することのみに努力し、伝える努力を一切放棄しているように思える。

そういう意味でこれまでの映画と一線を画するものだと感じた。

しかし、宮﨑駿にとってインコってなんなんだろう。

不思議な映画だ。

映画「捜索者」

捜索者 (字幕版)

何十年くらいぶりに、ジョン・ウェインの映画を観る。

監督もジョン・フォードだし、もう少し牧歌的なストーリーかと思ったら、かなりハードな内容だった。

兄家族がインディアンに襲撃され、両親、長女は殺され、次女はさらわれる。

詳しくはわからないが、家族同様の扱いを受けていたインディアンの血をひく兄とジョン・ウェインがその次女をさらった部族を追う。

ジョン・ウェインはもう少しバランスのとれた成熟した男を演じるものだと思っていたら、けっこうエキセントリックな行動をとる。

さらわれた次女がインディアンとして成長していることを知るとその次女を殺そうとしたことにびっくり。

ところどころにコミカルな演出があるが、中心の話は重い。

長男の婚約者のはずだった女の結婚式のシーンで、もどってきた長男といけすかない(ところがけっこう男気がある)男が自分ために殴り合うシーンを嬉々として眺める女の表情が、なかなかの演出。

最初とラストのドアを通したシーンが心に残る。

とにかく気の抜けない映画であった。

映画「ケイコ 目を澄ませて」

ケイコ 目を澄ませて [Blu-ray]

耳が聞こえないケイコの日常生活が淡々と描かれている(ボクサーというちょっと非日常はあるものの)だけなのに、なぜこうも惹かれるのだろう。

特に感動的なエピソードもないのに、ぐいぐい引き込まれてしまう。

ミットでの練習シーン、対戦相手とあいさつを交わすシーン、なぜかしびれました。

三浦友和も相変わらずいい仕事をしている。本当にいい俳優だと思う。

あとなんといってもこのざらついた映像。

連想したのはヴィルモス・ジグモンド

ディア・ハンタースケアクロウを思い出してしまった。

この映像がなければこの映画の魅力はほとんどなくなってしまうと思う。

とにかく、よかった。