物語を語る映画ではないと思う。
映像(カメラ)、演技、演出、音楽・・・これまで観てきた映画で映画を映画たらしめる技術の頂点だと思った。
涙があふれるような感動ではなく、心に沁みこんでくるものをしみじみとと味わえる感動。
ヴィム・ヴェンダース監督の作品は「パリ、テキサス」が好きだけれど、なんとなく気持ちにピタッとこないもどかしさを感じていた。役所広司も好きだけれど、大好きというわけでもない感じだった。
この映画の監督の感性と役所広司の演技は心を包むようで、本当に引き込まれてしまった。
あとは映像(光と影)と音楽も演出、演技と一体となって心に沁みこんでくる。
心に残ったシーンは、仕事の相方が辞めて仕事が夜まで続いてしまう事態に対して、管理会社にクレームをつけるシーン。このシーンで、彼は決して我慢ばかりしている人ではないことがわかって、どこかホッとしてしまう。
観終わって、河(川よりも少し幅のある流れの)のある街に住みたいと思った。
残りの人生であと何度観ることになるのだろう。
素晴らしい映画に出会えたことを感謝したい。